直美(ちょくび)現象とは?美容外科医急増の実態とその影響【3クリニック経営する皮膚科医が解説】

クリニック経営

最近「直美」というワードをよく聞きますが、どういうことなのでしょうか?

現状と背景の問題についてお話しますね

「直美」現象とは?

「直美」とは「直接美容外科」の略称

6年間の医学部卒業後、2年間の臨床研修を経て、保険診療をほとんど経験せずに美容外科クリニックに就職する医師のことを指します。

現在、年間で約200人もの医師がこの道を選んでおり、これは大学医学部2校分の定員に匹敵する数です

研修医の待遇と美容外科の魅力

一般的に研修医の給与は低く、私の場合は研修医時代の給料が12万円でした。

当時23歳くらいで、周りには結婚する友人もいましたが、たった12万円のお給料でしたので、3万円のご祝儀を払うこともできませんでした…

今の研修医の給料は20~30万円あるものの、美容外科医の給与の高さが魅力的に映るのも無理はありません。美容外科では、1年目から年収2000万円近く稼ぐことができ、当直もなく、一般の勤務医と比較しても圧倒的に高待遇です。

「せっかく苦労して医学部を卒業したのだから、コストパフォーマンスの良い職場で働きたい」と考えるのは当然の流れかもしれません。

なぜ直美が増えたのか?

直美の増加にはいくつかの要因があります。

  1. 診療単価の低さ: 例として一般皮膚科の場合は診療単価は3000円ほどと低いです。100人の患者様を診て、1日の売り上げが30万円ほどです。
  2. 診療報酬の低下: 国が決める診療報酬が年々下がっており、一般診療科の経営が厳しくなっています。
  3. 美容医療の需要増加: 日本全体で美容医療のハードルが低くなり、まるでメイクの延長のように考える人が増えていることも影響しています。

「負のスパイラル」と医療の未来

直美が増える一方で、内科や外科など、保険診療を支える診療科に進む医師が減っています。この流れが続くと、やがて日本の医療体制そのものが崩壊する可能性があります。特に、人件費や家賃が上がる中で診療報酬が下がり続ける現在の状況では、一般診療の開業が厳しくなり続ける一方です。

直美が増えることで、敬遠される診療科の医師不足が進み、その負担が増してさらに志望者が減るという「負のスパイラル」が発生しています

直美医師の見分け方

美容外科を受診する際に、担当医師が直美かどうかを見抜く方法もあります。現在、日本専門医機構は内科や外科、形成外科や皮膚科など19の基本領域の専門医を認定しています。専門医の資格を取得するには、特定のプログラムがある病院で3〜5年の研修を受ける必要があるため、専門医資格を持つ医師は保険診療での経験を積んでいる可能性が高いです。

形成外科の専門医資格を持っている医師であれば、しっかりとした研修を受けたことが確認できるため、安心して治療を受けられるでしょう。

専門医を持っていなくても開業されて実績のある先生がいらっしゃるのも事実ですので、一概にどちらがいいかとは言い難いです

直美を選ぶことは悪いことなのか?

美容医療や美容外科クリニックを否定するわけではありません。美しくなりたい、若返りたいという人間の気持ちは自然なものであり、それに医療が貢献できるのは素晴らしいことです
ただ充実した保険診療があってこそ成り立つもの

直美を選ぶこと自体は悪いことではありませんが、将来の目的やゴールを明確にしたうえで判断することが重要です。

 

タイトルとURLをコピーしました